Race Eye
最終戦ブラジルGPもレッドブルの1-2で幕。F1史上最長シーズンも無事完走を達成!
2011.12.27

 インドから11月2日に戻り、四日間だけ家にいてすぐ7日から第18戦アブダビGP&最終戦ブラジルGPツアー。これが今年最後の取材行、旅程はフランス〜アブダビ〜フランス〜ブラジル〜フランス〜日本、12月2日に帰国だ。師走まで飛びまわる初めての<史上最長シーズン>である。
 季節感が自分の中で薄れていく最終盤戦、アブダビGPは昨年より1週遅いだけだが気温は低めで連日25℃をちょっと超えるくらい。陽が落ちるとかなり涼しく、湿度も上がってきて中東の国にいるとは思えない。

 通算29回目、年間14回目のPP、S・ベッテルをマクラーレン勢、2位L・ハミルトンと3位J・バトンが包囲、これは今シーズン5度目。中国GPでは3位ハミルトン、ハンガリーGPは3位バトン、日本GPも2位バトンが“逆転”している。ベッテル包囲網を整えたときのマクラーレンの勝率は75%と高いのだ。

 スタートを無難に切っていったベッテル、だが1コーナーに単独トップで入った直後、不可解な左リア・タイヤのパンクが起きた。オープニングラップなのでコース上になにか異物とかマシン破片が落ちていたとは考えにくい。開催3年目で経験のあるコースマーシャルたちもしっかり路面状態を把握し、レース前には確認もしていたはずから、あれほど急激なエア漏れ、“バースト”を起こすようなモノがあったとは、僕にも思えない。
レース後、ピレリとレッドブル側は原因調査を徹底的に行ったがこの“犯人”を特定できずに終わっている。想像をたくましくすれば、ベッテルがアウトサイド・ラインで通過したとき、人工芝の中かあるいはその間に潜んでいた目視では見えない何か(相当鋭利な何か)をフロント・タイヤで踏み、それが跳ね上げられてリア・タイヤにダメージを与えたのかもしれない。「タイヤ構造に一切問題は無かった」という発表から“内部犯行”は否定されるので、それしか考えにくい重大アクシデントであった(もしもこれが序盤か中盤戦で発生していたら、もっと問題は深刻化した恐れがある)。

 こうしてチャンピオンは消え、レース主導権をハミルトンが握る。ミディアムとソフトのどちらも性能低下率があまり大きくはなく、彼のアグレッシブなドライビングにも不安は無かった。ハミルトン今季3勝目。

 スタート後、うまうまと外側にスペースを見つけた予選5位F・アロンソの観察力はさすがだ。彼(とベッテル)は初日FP2にここで同じかたちのスピンを演じ、そこから“ヒント”を得ていたのだろう。1コーナー外側進入ラインを試し、限界点をリサーチしていたアロンソはM・ウェバーをここでかわした。「意外にグリップが高いのは分かっていた」とアロンソはコメントしている。
 バトンとの2位争いに競り勝ち、10回目表彰台にフェラーリで滑り込んだ勝負師アロンソらしい内容である。一方バトンはKERS不調に陥り、コクピット内でシステムのリセット作業を続けながら3位へ。ブレーキング・ポイントなどを狂わせる緊急事態のなかを自力でコントロール、3年連続3位フィニッシュは目立たないものの健闘だ。シーズン後半になって地力を発揮したバトン、ある意味これは今年の彼のベスト・レースのひとつと言える。

 いったんパリに戻り1週間後にサンパウロへ向かう。機内はフランス人関係者やイタリア人プレスでいっぱい、いまイタリアからは直行便が無いようで彼らもフランス経由になるらしい。例によって機内で惰眠をむさぼっていると、知人と一緒に新人J・ベルニュ(後にトロロッソ加入が決定)がわざわざあいさつにきてくれたが僕は寝ぼけ眼で失礼した。ロータスでK・ライコネンと組むことが決定したR・グロジャンも同じ便、フランスはこの二人とロシア・チームのマルシアにC・ピックも加入でき12年には一気に3人の新鋭が増える。フランスGP復活プランも着々と進行中で、ルノー・エンジン供給体制も強化され、スポンサー企業も積極的になっている。一時F1界で“落ち目”だったフランスにもいよいよ復興の兆しが見えてきた。

 それに比べ我が日本はすっかり冷え切ったまま、小林可夢偉という世界に10人ちょっとしかいないエースドライバーに、全く“ナショナル・スポンサー”が無い状態はP・ザウバー氏にはとても奇妙に見えている。「カムイには魅力がないのか?」、いやそうではない。日本企業、広告代理店が魅力を感じていないだけである。個人的な思いを言えば、ここまで小林を育ててきたT社はなぜ彼をコマーシャルに使わないのだろうか。サッカー大会「Tカップ」開催には巨額の宣伝広告費を注いでいるだけに(ちなみに1位チーム賞金500万ユーロ)、いまこそ国際基準でF1エースに成長した“子飼い”の日本人を内外でT社がアピールするには絶好のタイミングではないのか。フェラーリ・エンジンのチームではまずいのだろうか。

 最終戦ブラジルGPでは新記録年間15回PPを達成したベッテルにギアボックス・トラブルの試練が遅い、それを巧みにカバーしながら2位。予選2位のウェバーがトップを引き継ぎ、今シーズンの“アット・ラスト・ウイン”を飾った。終わり良ければすべてよし、ウェバー7勝目でレッドブルが締めの1−2を飾った。

 フォースインディアはA・スーティル6位、P・ディ・レスタ8位のダブル入賞でチーム結成最高ランク6位を獲得。またザウバーも小林の連続入賞によってトロロッソを突き放し、ランク7位で終えることができた。昨年よりコンストラクターズ順位を上げるのがこの1年のテーマだっただけに、1年生エースはそのミッションを完全に遂行した──。
彼はその日の夜便でパリに向かうとのことで急いでサーキットを出た。僕らは小雨降るサーキットのプレスルームで最後の残業をして、深夜1時過ぎにレンタカーをフルスロットルで飛ばし危険がいっぱいの道を帰った。ホテルに着いてもルームサービスは無く、もちろんまわりのレストランもすべて閉店、深夜営業コンビニなんてあるわけがない。

 アフターレースはダイエット・ディナー(?)、簡単なモノをワインとともにつまみながらホテルの部屋でがまん。パリに戻ったら12月、クリスマス一色のシャンゼリーゼにでもくり出すとしよう。2011年ツアーのゴール、帰国するまであともう少し。

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