Race Eye
ドイツGPアフターレース〜今季初の最速ラップに王者の復活を見た!〜
2009.07.19

 甦ってきたアロンソ・ルノー。ドイツGP49周目にルノーのF・アロンソが「最速ラップタイム」を今年初めて記録した。昨年、終盤に2勝しているが最速ラップは一度もなく、ルノーでは06年鈴鹿・日本GP以来3年ぶりになる。結果は7位だったが初優勝したレッドブル、M・ウェバーとは24秒差、さらに前を行く5〜6位のブラウン勢を猛烈に追い詰めていった後半のハイペースに「王者の復活」を見た。

 予選の結果は今シーズン最悪の12位グリッド。Q2でミスがあってQ3に進出できなかった。直前のQ1でウェバーについで2位につけていただけに惜しまれる結果になった。この位置のレース戦略としては燃料を積み込み、1回目ピットインをできるだけ延ばし、他車が次々に入っていって前が開けたところでスパートするのがセオリーであり、ベターな戦略だ。しかしアロンソはセオリーとは逆の発想を選択した。燃料量は668.2Kgでレッドブル勢よりも7.2Kg多いだけ、予選8〜9位のフェラーリ勢よりも軽かった。

 なぜか。今年のルノーはスタートダッシュが全くよくない。ベストタイミングでキックしても“発進加速力”が鈍く、むしろグリッドポジションを下げることが多かった。そこでアロンソはセオリーとは逆に、車体重量を軽くしてそれをカバーしようと考えたのだ。もうひとつの理由はタイヤチョイスの問題だ。彼はこのスタートでスーパーソフトを使い、後は固めのミディアムを連続してチョイスする選択をした。本命タイヤをスタートに絞り、中盤以降に勝負をかける計算だ。だがスーパーソフトとのマッチングはもうひとつで、マシンが重いと磨耗が早めに発生する傾向があったため、軽い状態でスタートせざるを得なかったのである。
 
 1時30分、ピットレーン・オープン。放送席から見ていたらアロンソはいつもと違う行動をとっていることに気づいた。普通は1周してグリッドにつくのがセオリーなのに、彼は5周もピットレーンを素通りした。目的は二つ。急に気温、路面温度が上昇してきていたから、ここで最後のタイヤ・マッチングを確認すること。もうひとつは5周してさらに燃料を軽くすること。いかにも勝負師フェルナンドならではの判断だった。予選の自分のミスを取り戻すには、なんとしてもスタートから切り込まねばならないという覚悟が見て取れた。

 2時00分、フォーメーションラップ・スタート。ここで信じられない光景が目に飛び込んできた。なんとアロンソがタイヤ・ウオームアップ中に最終コーナーでスピン、それでも何とか立て直し、マシンを12位グリッドに付けた。
原因は彼のドライビングではなく、「クラッチに問題が起きた」とレース後、彼は語っていた。これでアロンソ自身が賭けたスタートダッシュは苦しくなり、実際にスターとでの加速は鈍かった。それでも1周目を11位とひとつアップして戻ってこれたのはマクラーレンのL・ハミルトンがパンクで後退したからだが、自分よりはるか後ろにいた16位グリッドの燃料満載したザウバーのR・クビサの背後にまわってしまった。

 苦戦するアロンソ。不安があったスーパーソフトも次第に変調し、12周目にはフォース・インディアのG・フィジケラに道を譲らざるを得なかった。これで12位、ゲームは振り出しに戻ったかのように見えたが……。
 17周目にピットへ、ミディアムにチェンジ。ブービーポジション18位まで後退、ここからしかしアロンソは46周目までのロングスティントで6位まで追い込む。自己ベストを更新し続け2回目ピットイン、再びミディアムを装着すると48周目1分33秒744、49周目1分33秒365(最速ラップ)、50周目1分33秒526・・・と52周目まで“5周”も1分33秒台を連発、ブラウン勢の二人、R・バリチェロとJ・バトンを捕らえて追い回した。

 選手権トップのブラウン勢より、1秒以上速いペースで彼らに迫りながら、順位を上げられなかったのは、“ディヒューザー乱気流”に邪魔されたから。残念ながら7位2ポイントが、このレースでの「苦戦の報酬」だった。
「昨年の再現、これから後半に勝てるかどうかと言われれば難しいが、表彰台は見えてきた」──。
勝負師アロンソは常に慎重に言葉を選ぶが、次戦の低中速ハンガリーGPではニュルブルで見せたコーナーワークがフィットするのは間違いない。彼のコメントが控えめなので、代わりに言っておこう。昨年もハンガリーGPの4位復活からこの男はシンガポール、日本と劇的な2連勝を見せてくれた、と。

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